☆彡もう時間がないんです!

 浪曲師の京山 幸枝若さんの聞き書き連載が読売新聞に載っていて、春野恵子さんら若手浪曲師と続けている舞台『浪曲三人舞台(ざんまい) 』について語っておられた。

 『若い浪曲師らの芸はまだまだやけど、今は「じっくり修行してから世に出る」なんて悠長なことを言ってはいられない。10年先に「昔、浪曲という芸があったな」などと言われぬよう、「修行しながら売れる」というやり方を探さねば』

 民謡三味線の世界にもこういう危機感が必要だ。他のいろんな伝統芸能と比較しても、危機感がなさすぎると思っている。三味線の世界にはもうあまり時間がないし、その世界を縮小した三味線弾きひとりひとりの一生なんて宇宙がまばたきする一瞬の間に過ぎない。限られた時間の中で、次の世代に確実にバトンを渡すことを真剣に考えていかなければ「三味線ってなあに?」「ギターに似た楽器だったらしいよ」なんてことになったら私たちの責任だ。

 私はよく人に「もっと上手になったら人前で演奏しよう、とか思ってたら一生人前で演奏できないよ」と言うんだけどそれには二つの意味があって、一つは幸枝若さんの言う「修行しながら売れる」必要を感じていること。もう一つは、芸事というもの、一人の人間がたかが何年、何十年修行したくらいで完全にこなせるわけなんてないのだから、もっと上手になったらというのは不遜な考え方で、不完全なままでも人に聴いてもらうといった志や勇気が必要だということ。

 私自身「今まで一生懸命練習してきたのだから本番では最高の力を出したい。練習は裏切らない。できるはず‼」って思って臨んでいた頃は失敗ばかり。そういう気持ちを持たずに演奏できるようになってきたらちょっとパフォーマンスも向上してきたと思ってます。

  一生勉強です。