☆彡またまたパンの神様

　先日友人Nさんと南森町にあるNさんの先輩が経営するおうどん屋さんに行きました。ランチを終えてNさん、先輩、私の3人でおしゃべりしている時に、壁にかけてあるテレビ画面が妙に気になり始め、話の合間にチラチラと見ていました。テレビが見えるのは私の席だけで、対面していたNさんや先輩からは見えていません。話の最中にあまりテレビの方を見るのも失礼かと思い、２人になるべくわからないようにしていたのですが、とあるパン工場で、ハンパもののパンを格安で敷地内の自動販売機で売っているという話題を放送していました。普段よくその販売機でパンを買うという人たちのインタビューもあって「ええなあ～。こんなんが会社や家の近くにあったらいいのに」なんて思いながら見ていますと、あれっ？　なんだか見たことのあるような建物が映ったのです。

　放送の最後に「南森町　エーワン」という文字が出て私はあっ！　と思いました。つい１時間ほど前に南森町駅からおうどん屋さんまで歩いて来る時に「ああ、エーワンってこんなところに工場があったんや」と思いながら見ていた建物ではありませんか。な……なんという神偶然！　でもせっかく3人で話している最中に「あ、あれ」とか言ってさっきの会話はうわの空だったのかと２人に思われたら失礼かと思い、驚きはグッと胸にしまった私でした。

　その後、私とNさんはお店を出て天神橋筋商店街を散策しようということになり、先輩も店頭まで送り出しに来てくれました。失礼のないように、先輩と別れてからこっそりNさんに「実は行きたいところがあるねん」と言おうかなと計画していると、お店の前に自転車にのった１人のオバチャンが。急ブレーキも高らかに、かなり慌てた様子で「すいませ～ん。エーワンってどっちに行けばいいですか？」と先輩に聞いているではありませんか。な……なんという神偶然。さっきのテレビを見ていたオバチャンが、急いで家から自転車を飛ばしてきたに違いありません。私は矢も楯もたまらなくなり、先輩がいることも忘れてNさんに「私もエーワン行きたいねんっ。さっきテレビでやっててん」と叫びました。そして「行こう行こう」ということになり、なんと先輩も「私も行くわ。200円だけ持ってきた！」なんてことになり、3人でエーワンへと向かいました。

　パンの自動販売機はガラス張りのコインロッカーのようになっている中にそれぞれいくつかのパンがビニールにいれてセッティングしてあり、好きなパンのロッカーにお金を投入するとそのロッカーのガラス扉が開くようになっていて自分でパンの袋を取り出すのです。10年ほど前にオランダで体験したコロッケの自動販売機と同じ仕組みです。ガラス張りのところからしか中のパンが見えないので、みんな変な格好に体を折り曲げたりして必死で中を覗き込んでいます。面白い。はっきり言って手動販売機だと思います。さあ選ぶぞ！　と勢い込んだところで衝撃の事実が発覚します。なんと財布の中に100円玉がない！　パンのセットは100円のと200円のの2種類で、当然ながら手動販売機にはお札を受け入れたりお釣りを返金する機能などついていません。「両替お断り」という紙まで貼ってあります。な……なんという紙対応。当然といえば当然です。破格値で商品を提供している上、来る人来る人に親切に両替までしていたら工場の人たちは仕事になりません。およよ～　私は「Nさん、100円玉って借りられる？」と泣きつきました。あつかましいことに「200円借りたいねん」ってどんなけ必死やねん。Nさんは快く200円貸してくれましたが、あとでまた衝撃の事実が発覚します。なんと私が200円借りたためにNさんは小銭が足りなくなり「200円だけ持ってきた」と言っていた先輩からその時100円借りたそうなんです。先輩ゴメンナサイ。で、Nさんと私は200円のパンセット、先輩は100円のパンセットを手に、ニコニコ　(*^▽^*)

　駅から歩いた時に私がエーワンの工場に気づいていなかったら、私が２人の話に夢中になってテレビに気づいていなかったら、私とNさんの座る位置が逆だったら、違うチャンネルがついていたら、おうどんを食べて話をせずにすぐお店を出ていたら、ありえなかったこと。小さなできごとではありますが、偶然の積み重ねの不思議さに改めて感動した不思議な昼下がりでした。