六代目神田伯山さんの講談にハマりだしている。今最もチケットの取れない芸人さんなので、チケットが取れる芸人さんになったら(冗談です)ぜひ東京の小屋に生伯山を聴きに行きたいなとか思っている。
先日、ネットにアップされてる伯山さんの映像を観てたら「講談師の言うことなので、ホントかどうかわかりませんけれども」という一節があった。
それを聞いてふと思い出したのが、とあるイベントで今は亡き四代目旭堂南陵さんの講談を聴いた時のこと。師が「講談師は本当のことしか言いませんからね」と言った。その時に笑ったのは広い会場で私含め数名。
お二人の言葉は言わずと知れた「講釈師(講談師のこと)見てきたような嘘を言い」の川柳を下敷きにした超ハイセンスな洒落である。しかし、くだんの川柳を知らない人にとってはちっとも面白くない。
恐らく、江戸時代から昭和初期くらいまでの聴衆がこの洒落を聞いたら、その場にいたほとんどの人が笑っただろう。今と違って情報の入手経路が限られていたから、一般的な知識・教養として市民が共有できている事柄が多かったからだ。
このように、世間には「知ってる人だけが面白い」ということが結構ある。特に芸能・芸術・歴史などに多い。そしてその大半は、特別に教養を身につけようと頑張った成果ではなく、意外に小中学校で習っていたり、教科書に出ていた内容だったりするのだ。
大人の基礎知識の差というのは、小中学校の頃にいかに熱心に先生の話を聞いていたかとか、いかに興味を持って教科書や資料集を読んでいたか(眺めていたか)、そしていかにそれが心に残っているかの違いである。こんな簡単なことで人から一目置かれるなんてお得だと思いませんか。
単なる知識と、自分が心底から理解していることとはもちろん違いがある。だけど例えば、作品を読んだことがなくてもその作家の名前は知ってる、というのと全く知らないのとではやはり人に与える印象や影響力が違う。そういうことがわかってくると、ますます新しい知識を仕入れるのが楽しくなる。だから一生懸命勉強したり、知らないことを知ろうと努力したりすることはとても大事なのだ。
蛇足だが、旭堂南陵さんが舞台でああ言ったのは、どれくらいの人が意味をわかって笑うかを確かめ、その日の観客のレベルを計ろうとしたのじゃないかと今でも私は思っている。
コメントをお書きください
kirokuya (木曜日, 22 2月 2024 20:24)
「講釈師見てきたような嘘を言い」
(虚実とりまぜて)(虚々実々)な語りを端的に表した名川柳ですね。講談にかぎらず、落語、浪曲、広くいえば語りを伴う芸能全般にあてはまるのかも…
極論すれば、その語り表現でいかに楽しませるか!?は芸能者さんのお仕事ですね。語り=騙り。
実生活の会話の中でも、自分の喋りに酔ってしまい、話しを盛ったり、脚色したり、加齢のせいばかりではなく、現実と虚構の境目に居ることがあります。また夢のなかでの現実感…怖い時ありませんか?
伯山さん、末広亭で鑑賞したいですねぇ…
雛澪 (木曜日, 22 2月 2024 23:39)
話を盛るのはなるべくやめとこうと思いながらも、失敗などした時に
「これはネタになる」と思うとついつい面白おかしく脚色してしまうことがあります。
夢のなかの現実感…失敗してものすごく焦っている夢や、わけがわからないことで
困っている夢をよく見ますが、起きた時の安心感はハンパないです。
10年以上前に東京に行った時、新宿末広亭行きました。
伯山さんはもちろん出てませんでしたが、当時ものすごい人気だった
「うめ吉」さんが出てました。
kirokuya (金曜日, 23 2月 2024 04:40)
末広亭、行かれたんですね。芸人さん達と席亭さんとお客さんとそして年月に磨かれたエエ寄席小屋ですよね。
私の上記コメント内、…語りを伴う芸能全般…とありますが、(実話)を題材にした演題演目です。念のため…
マリコ (日曜日, 25 2月 2024 16:26)
毎回勉強になります♡
さすがみゆきさん^ ^
本当にその通り!
私も知識つけたいです〜
雛澪 (日曜日, 25 2月 2024 23:39)
マリコさん、またゆっくりお話したいですね!