☆彡中山美穂主演「新しい靴を買わなくちゃ」

 中山美穂さんのLoveLetterが観たくてツタヤディスカス(ネットで申し込めるレンタルDVD)で探したが、さすがに今は在庫なし。仕方なく(?)綾野剛さんの出演作品を物色してたらミポリンと共演(相手役ではない)の「新しい靴を買わなくちゃ」を見つけた。しかも物語の舞台が大好きなパリ。製作がLoveLetterの岩井俊二監督で、音楽監督が坂本龍一教授だ。なんと贅沢。恋愛ドラマの名手として一世を風靡した北川悦吏子さんが脚本・監督なだけあって、無難だけど爽やかさに好感の持てる良作に仕上がっている。ちょっとローマの休日を思い出した。
 ミポリン演じるアオイさんが「人間はどっかに行っちゃうけどエッフェル塔はいつもそこにある」と言ってたのが印象的だった。高い建物が少ないからだろうか、エッフェル塔は通天閣や東京タワーよりも存在感が大きく、見るものを安心させてくれる。建設当初は非難轟轟だったなんて嘘みたいだ。
 私が初めての海外ひとり旅でフランスに行った時の話。シャルル・ド・ゴール空港からホテルへの行き方があまりにもわからなさすぎ、やっと到着したホテルの部屋に閉じ籠ってその晩は泣いた。何の知識もないのにたったひとりで地球の裏側まで来てしまった自分は、分不相応なことをしているのだと感じて後悔した。そして「2週間ずっとこのホテルの中で本でも読んで過ごそう。言葉もわからないのに町に出て怖い目にあうよりましや」と決めた。
 次の朝、朝食をとるため怖々ホテルのレストランに行った。格安プランで予約した私の朝食は、パンとコーヒーだけの質素なもの。そのパンを一口かじった瞬間、私の人生が変わったのだ! なんの変哲もないただのクロワッサンの美味しかったことといったら……フランスのパンはレベルが違う。それだけで何だか勇気がふつふつとわいてきて、クロワッサンを食べながらまたぽろぽろと私は泣いた。もし人に見られてたら相当へんなアジア人だったろうな。
 それからは人が変わったように、10軒以上の美術館を始めとして2週間あちこち飛び回り、クレカを落として盗まれるなどのトラブルもなんのその、到着時には怖くて泣いた私が帰りの飛行機ではフランスを離れたくなくて泣いていた。離陸した窓の下、雲の切れ目から虹のかかったエッフェル塔が見えた時、またおいでね~と言ってくれているように私には思えた。
 ずいぶん脱線しました。中山美穂という人は、演技も唄もそこそこ上手なのに、素人っぽさがいつまでも抜けない人だったなと思う。どこかオドオドしてるというか、心ここにあらずみたいな。でもそこが、女優・歌手としての中山美穂の魅力だったのだと思う。芸に生きる人間には3通りある。普段からサービス精神旺盛で華やかな、まさにそのために生まれてきたような人、それから普段はぜんぜんパッとしなかったりおとなしかったりするのに、いざ舞台に上がると180度変わって大きく強くなる人、3番目がミポリンタイプで遠慮がちや恥ずかしさをいつも心のどこかに抱えている人。どのタイプであろうと芸の中に人としての真摯さを感じとることができれば、私たちはその芸に感動するのだ。

 この映画観た人はわかるけど、今となってはドキッとする場面もあったね。ミポリンが亡くなって妹の中山忍さんが発表した挨拶文はすごく素敵だった。

 中山美穂さん、安らかに🌷🌷

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コメント: 2
  • #1

    kirokuya (月曜日, 13 1月 2025 09:53)

    中山美穂さん。

    表題の映画は観ていないので、コメントありません。彼女主演の映画で観たのは唯一*東京日和(監督共演竹中直人)かな。ほとんど忘れてますが、叙情的な美しい映画だった記憶はあります。たしか生け花!女性が居る部屋には生け花がある!というのを象徴的に表現されてたよ~なシーンがうすぼんやりとよみがえります。
    ドラマでは*毎度おさわがせしますをリアルタイムで観ていました。木村一八とのご両人の初々しい掛け合い、これもうすぼんやりと思い出します。
    WANTSフューチャリングミポリンの*世界中の…なんたらいう歌はハジケてて良かったです。

    もはや故人になられましたなぁ…お偲びしつつ合掌。

  • #2

    kirokuya (月曜日, 13 1月 2025 09:58)

    訂正
    WANTS→WANDS