☆彡出口美穂さんとジルベール・ベコー

 シャンソン歌手の出口美穂さんが4月11日、87歳で亡くなられた。シャンソンのことなど全く知らない私も出口さんのお名前と経営されるシャンソニエ、ジルベール・ベコーの店名はなぜか子供の頃から知っていた。

10年ほど前だろうか、仕事の昼休みに外を歩いていて、当時会社のあったビルのすぐ隣のホテルのフロア案内板に「ジルベール・ベコー」の文字を見つけ「えっ、これってもしかしてあ……あのジルベール・ベコーなの? こんな近くに!」と驚いたことを覚えている。

ある日勇気を出して音楽好きの同僚と行ってみた。ホテルの地下、重い木の扉。武骨でレトロな調度品、壁には煙草をくゆらすジルベール・ベコーの大きな写真。常連らしき渋めのお客さんたち。シャンソン酒場なんて入ったこともない私たちは二人ともほぼ下戸。当然チューハイレモンなんてメニューにない(なかったと思う)。何を頼んだかももう覚えていない。

出口さんやお弟子さんたちが唄うシャンソンは誰もが知るポップなものではなく、男に捨てられた女が乳飲み子を抱えて場末の安酒場でくだを巻いているといった系のディープなやつ。途中でリクエストを聞かれて「オーシャンゼリゼかシャンソン人形」と言うのが恥ずかしかったけど、ちゃんと唄ってくれました。

あれから近くを通るたびに気になって、店名が残っているのを見て安心していたけどコロナ以降はずっと休業されていたんですね。そして出口さんのお嬢さんがお店を継がれ、シャンソンを柱にした多ジャンルのミュージックバー兼レンタルスペース「ミュージックサロン・ベコー」として近日リニューアルオープン予定だそうです。